「ハンブルグ日本人学校での総合的な学習の時間の取り組み」
ハンブルグ日本人学校
                              細川 博資
 
 在外教育施設での総合的な学習の時間は私たち派遣教員にとっては楽しみのひとつでした。派遣されて最初の年は何が何だかわからないまま現地の学校と交流をしました。言葉の問題,意識の問題,制度の問題などやってみて初めてわかることがたくさんありました。 2年目以降はその反省に立って計画を進めていきました。学校の総合的な学習の時間のテーマが「国際理解」でしたので材料はいくらでもあるのですが,生徒達の意欲は皆無に等しい状態からのスタートでした。「えー,また・・・。面倒くさい。」など前向きな言葉はなかなか聞かれないのが現状です。何がいけないのだろう,中学部のスタッフであれこれ考えてみました。現地校が日本人学校にやってきての交流はかなり頻繁に行われていましたが,自分たちが外に出て現地校の様子を見ることはほとんどできていなかった。以前サッカーのワールドカップが日韓共催で行われたとき,大学生に日本文化を教える交流をしました。この時の子どもたちの盛り上がりを思い出し,受け身の交流ではなく,今回は日本人学校が現地の学校を訪問し一緒に授業を受けるという内容で企画を立て進めていきました。
 実際に交渉を進めていくと制度の問題などいくつもの難関が待っていましたが,そこは交流相手の学校の担当者に熱く語る(基本的にはドイツ語ですがやっぱりむずかしいので英語科の教諭にいっしょに行ってもらい最後は英語で語ってもらいました。)ことで,クリアしていきました。
 交流の日,日本人学校の生徒にとってはドイツ語で数学の授業を受けるということでかなりのストレスがかかっていたようでした。でも,実際に授業を受けてみると同じ内容を学習していることもあり,よく分かると同時に,子どもたちの反応の違いや,教室に対する考え方の違いなど驚くこともたくさんあったようです。授業後の交流を質問の時間にしてもらっていたこともあり,日本人学校の子どもたちから盛んに質問が出たことからも,意欲・関心の高まりを感じることができました。
 国際理解というテーマは在外教育施設にとっては取り扱いやすい題材のように感じますが,教員が自ら現地に赴き現地の方としっかり交流,連携しながら計画を立てていかなければ子どもたちが意欲を持って取り組める総合的な学習の時間にはなりません。逆に言えば外国人である私たち教員が努力をし,現地の方々と関係作りをして,はっきりとしたねらい,視点を持って計画を立てていくことで充実した,子どもたちが意欲的に取り組める学習の時間を作ることができるということです。たいへんですが,やりがいがある仕事でした。
 困難を楽しみに変えていく力,教員も日本人学校の子どもたちも持っていました。
 
(写真)交流学習の企画についてアドバイスをいただいたJohanes-Brahms SchuleのGuinter Fredrich氏(お互    いに理科の教員であったことで個人的にもお付き合いをいただきました。)