人が動く全海研をめざして・・・

                                  全海研・会長   生野 康一

83号巻頭言(2007年1月20日発行)

 2007年を迎えました。400名を越える先生方が、世界の各地にいる子どもたちの元へ旅立つ準備を進めています。海外で過ごす子どもたちの明るい笑顔を絶やさないように頑張るための研修が続いています。全海研も先生方の力になれるよう日本サイドで研修を重ね支援の体制作りを進めています。

 「素晴らしい派遣教員を送り出そう」の合言葉を元に、全海研では全国大会を西と東で交互に開催し実践を発表しあい、次の課題を確認して全国の仲間と協同で研究を進めています。また、ブロック大会(全国9ブロック)では各ブロックの特色を生かしながら地域的なつながりを重視し、人と人のネットワーク作りを積極的に行っています。都道府県の研究会には、全海研の幹事も参加する中で、情報交換を活発に行っています。帰国教師、これから派遣を希望する教師、国際理解教育に関心のある方々など、いろいろな分野の方の参加がある研究会です。全国に13000名の帰国教師が散らばる中、国際理解教育を支えるために必死で頑張っている教師に各地で出会います。赴任国での取り組みを、目を輝かせて語る教師の周りに派遣を志す素晴らしい教師が集まります。研修に力を入れない教師を海外へ送り出すわけにはいきません。在外教育施設をより充実したものにするために帰国してからの活動も問われるところです。帰国教師の活躍が、より素晴らしい教師を生み出し、海外子女教育の充実発展に繋がっていく活動を強力に推進していきます。

日本を離れて3年間。その地の水を飲み、その地で育てられた食べ物を食べながら、異文化の中で日本の文化を教えます。赴任国の素晴らしさを自分の宝物に変えていきます。教師が、子どもが、保護者がそれぞれに宝物を持って帰国します。その宝物は、国内の国際理解教育の充実に大いに役立てられてきました。「総合の学習」の中でも、いろいろな角度から切り込んだ実践が、海外子女教育の国内への還元として各地で展開されています。この取り組みが個人の取り組みや、一地域の実践で終わるのではなく、ネット化され素晴らしい宝物として共有されることを願っています。点と点を結ぶための役割を全海研が担っています。

 帰国児童生徒を温かく迎えるための優しい学校づくりをするために、「帰国子女教育」が国をあげて取り組まれた時期がありました。そして今、日本のどこの学校でも帰国生も外国人児童生徒も温かく迎え入れてもらえる状況になったといわれています。本当にそうでしょうか。友だちを沢山つくれるだろうか、友だちと仲良く勉強できるだろうかという不安を保護者も子どもも抱きながら帰国します。そんな子どもたちを優

しく包み込んでくれる学校づくりが出来ているでしょうか。帰国教師も任期を終えて帰ってくるとき、帰国先の学校は優しく迎えてくれているでしょうか。海外での貴重な体験を、同じ体験をした仲間の会でしか話すことが出来ないという話を時々聞きます。自分の宝物を話すことができない教師は国際理解教育からも離れていってしまいます。貴重な人材を放置したままにしている学校現場があちこちにあるような気がします

「私たちがつくった学校だから・・・」を合言葉に、土曜日一日だけの補習授業校を運営している人たちがいます。派遣教師もいない小さな補習校のスタッフの皆さんは、教育には素人の方々です。運営委員会、保護者、現地採用の講師の方々と話しをしていると、子どもたちのためにたとえ土曜日一日の学校でも守り育てていかなければならないという熱い思いが伝わってきます。教育の素人であるという思いが、子どもたちのためにより素晴らしい学校を作ってやらなければならないという強い思いになり、お互いの力をフルに出し合って運営されています。会社での自分の仕事をきちんとこなしながらの学校づくりには苦労が山ほどあるだろうと思います。皆さんと話しをしていると、その苦労を乗り越えてきた共通の使命感のようなものを感じます。全海研もプロジェクトを立ち上げ、日本サイドからの支援のあり方を検討し、カリキュラム作りをはじめ、できるところから取り組みを進めています。日本の学校が、補習授業校から学ぶことが沢山あるような気がします。

 帰国教師が元気でいてほしい。その元気が日本の教育を変える力を持っているから。退職した教師も元気でいてほしい。持って帰ってきた宝物や帰国後の活躍を退職と同時に終わりにするのはもったいないと思います。派遣を目指す教師のためのアドバイザーとして各地で活躍していただきたいと思います。平成19年度から文科省がシニア派遣を実施します。全海研も退職後も活躍されている方を推薦し、補習授業校で頑張っていただくための取り組みを進めております。

 全海研は人が動く組織を目指します。それぞれ現場を抱えた教師が動くことは、簡単なことではありません。しかし、動かなければ出会いはありません。出会いのない所から新しいものは生まれません。世界をつなぐ全海研が、次代の日本を背負う子どもを育てるために一歩前に出る活動を幅広く進めています。動く人の目は、きらきらして・・・